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大阪地方裁判所 昭和61年(わ)1120号 判決

本店所在地

大阪府高槻市辻子三丁目六番三号

商号

梅村三精株式会社

代表者

梅村浩こと金井浩

本籍

韓国釜山市西区芙蓉洞壹街二〇番地

住居

大阪府茨木市北春日丘三丁目五番四八号

会社役員

梅村浩こと金井浩

一九三二年三月六日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官藤村輝子出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人梅村三精株式会社を罰金四二〇〇万円に、被告人金井浩を懲役一年二月にそれぞれ処する。

被告人金井浩に対し、この裁判が確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人梅村三精株式会社(以下、被告法人という。)は、大阪府高槻市辻子三丁目六番三号に本店を置き、同所等においてパチンコ店を経営するもの、被告人金井浩は、被告法人の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人金井浩は、被告法人の業務に関し、法人税を免れようと企て

第一  昭和五六年九月一日から昭和五七年八月三一日までの事業年度において、その所得金額が二億一〇二五万八九七二円(別紙(一)修正貸借対照表参照)で、これに対する法人税額が八五五一万円であるにもかかわらず、売上げの一部を除外するなどの行為により右所得の一部を秘匿したうえ、昭和五七年一〇月三〇日、大阪府茨木市上中条一丁目九番二一号所在の所轄茨木税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一一二一万三〇二二円で、これに対する法人税額が一九一万一一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税八三五九万八九〇〇円を免れた

第二  昭和五七年九月一日から昭和五八年八月三一日までの事業年度において、その所得金額が一億三一六三万三〇九八円(別紙(二)修正貸借対照表参照)で、これに対する法人税額が五一九一万六二〇〇円であるにもかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿したうえ、昭和五八年一〇月三一日、前記茨木税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一〇八六万九四〇五円で、これに対する法人税額が一一九万五三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税五〇七二万〇九〇〇円を免れた

第三  昭和五八年九月一日から昭和五九年八月三一日までの事業年度において、その所得金額が七二六六万六一八九円(別紙(三)修正貸借対照表参照)で、これに対する法人税額が二七七九万七五〇〇円であるにもかかわらず、前同様の不正行為により右所得の一部を秘匿したうえ、昭和五九年一〇月三一日、前記茨木税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の欠損金額が一億四五七〇万二九五一円で、納付すべき法人税額が〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税二七七九万七五〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目) ―カッコ内の数字は、検察官請求証拠等関係カード請求番号を示す。―

判示全事実について

一  被告人金井浩の当公判廷における供述

一  被告人金井浩の検察官に対する供述調書三通

一  被告人金井浩の収税官吏に対する質問てん末書二〇通

一  李花仙、有友忠秋の検察官に対する各供述調書

一  李花仙(九通)、洪昌男(五通)、朴健造、金森龍司、金沢友栄、朴正武、石田英明(二通)、安部慧(三通)、中平明、榎本正男、榎本利孝、金忠吉(76)、有友忠秋(一通)、梅村隆盛、李夏竜(二通)、金容太及び李煕健の収税官吏に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の査察官調査書二四通(15~18、20~22、25~27、29~32、34~42、44)

一  登記官作成の法人登記簿謄本

一  金井浩作成の定款写

判示第一、第二の各事実について

一  金忠吉(75)及び茂山新次郎の収税官吏に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の査察官調査書三通(19・24・28)

判示第二、第三の各事実について

一  井上英晴の収税官吏に対する質問てん末書二通

一  収税官吏作成の査察官調査書二通(23・45)

判示第一の事実について

一  収税官吏作成の査察官調査書(46)

一  茨木税務署長作成の証明書謄本六通(4~9)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(1)

判示第二の事実について

一  収税官吏作成の査察官調査書(33)

一  茨木税務署長作成の証明書謄本二通(10・11)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(2)

判示第三の事実について

一  収税官吏作成の査察官調査書(43)

一  茨木税務署長作成の証明書謄本(12)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(3)

(法令の適用)

被告人金井浩の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年二月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予することとする。

被告人金井浩の判示各所為はいずれも被告法人の業務に関しなされたものであるから、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告法人を罰金四二〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

被告人は、本件ほ脱により自己の利得を企図したもので、その動機に酌量の余地はなく、売上げを記録するコンピューターをあらかじめ操作して売上げを除外するなどその犯行態様も巧妙、悪質で、脱税額も多額にのぼり、査察を受けるや種々の罪証いん滅行為に及んでいるのであって、その犯情は甚だ悪いが、現在では本件犯行を反省し、納税を終え、再び本件のような犯行に至ることがないような方策が、不充分ではあるが、講じられていること等の事情を勘案して、主文のとおり量定した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 上原茂行)

別紙(一) 修正貸借対照表

昭和57年8月31日現在

〈省略〉

別紙(二) 修正貸借対照表

昭和58年8月31日現在

〈省略〉

別紙(三) 修正貸借対照表

昭和59年8月31日現在

〈省略〉

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